究極のSMプレイ
皆さまお久しぶりでございます。だいぶ暑くなって参りましたが、如何お過ごしでしょうか。
SMの判例を紹介したいなぁと思いながら試験で忙しく、なかなか筆を取れずにいました。
更新が遅くなりましてすみません。
さてさて、今回はなんとびっくり、世の中にはこんな殺人もあるのか、究極のSMの行き着いた先、という事件をご紹介したいと思います。
ちょっとグロッキーで、理解し難い事例ということを初めに申し上げておきます。
読むのをやめるなら今です。
時は20年ほど遡ります。場所は大阪。ある29歳の男性Xは、複数の男娼に依頼して、2万円払って下腹部を殴ってもらうというSMプレイで快感を得ていました。
ある日、この男性Xはお気に入りの男娼Aに対して、包丁を持ち出しながらこう言いました。
「頼みごとがあるんです。この包丁で私の腹をバサーっとさしてもらえませんかねえ。ここをAさんに刺されていることを考えてたら、もう我慢できないんですよ」と。
報酬は800万円だそうです。
Aは初め、何回か断りましたが、どうもこの800万円の報酬に目が眩み、ついには同意しました。
その数日後、
Xから「バッサリやって欲しいんです。お腹に入ってるもの全部出して殺して欲しいんです。」
という電話がかかり、
Aは「わかりました」と言って電話を切りました。
Xの用意周到っぷりは感心さえします。
事件の前日、Xは男娼Aを自宅に呼び、打ち合わせを行いました。
・お金はコインロッカーに置いておくこと。
・明日、お腹を裂いてもらう時に鍵を渡すこと。
・殺害が終わったらロッカーのお金を受け取ってほしいこと。
・Aさんに疑いがかからないように、Aさんの情報があるものは全て処分したこと。
そして、Aさんに殺されると考えたら興奮して堪らない、とXさんは言いました。
犯行の日です。
前金30万円まで用意したXはそれをAに渡し、Aは「ホンマにかまへんねんな。」と最後の確認をしました。
「お願いします。」
そうXが言って頷くのを見て、
AはサバイバルナイフでXの下腹部を一思いに突き刺し、殺害しました。
以上が事件の経緯です。
原判決で裁判所は、普通殺人罪(刑法199条)の成立を認めましたが、高等裁判所での控訴審では真意に基づく殺害の嘱託であると判示し、嘱託殺人罪(刑法202条)の成立を認めました。
嘱託殺人罪は普通殺人罪よりは軽く処罰されるため、
被告人Aは懲役4年の判決を言い渡されました。
法学部の勉強としては、この事件は殺人罪か、嘱託殺人罪か、という争点に注目することになりますが、事件の経緯を考えるとまさしくSMプレイの行き着いた先、と言えると思います。
現に、この事件に関しては、あの堅苦しい裁判所が大真面目に「究極のSMプレイである」と判決文で示しているのです。
殺害されるということが快感。
さすがに理解はできませんが、世の中にはこういう方もいらっしゃるのだなあと思いました。
SM趣向と人の性癖は百人百色、といったところですかね。
実はこの事件、
殺害した後にAが指定されたロッカーを開けたら、中は空でお金なんて入っていなかった、というオチがついてきます...。
嘘のような本当の話。
如何でしたでしょうか・・・。
次回は、不倫について書けたらなあと考えております。。。(いつになることやら)
本日も最後まで記事を読んでくださりありがとうございました(*ˊᵕˋ*)੭ ੈ
※以下に事件番号等を載せておきます。
裁判所のホームページでは見られないのですが、Web上で検索をかけると記事が出てくるかと思います。
判例ID 28035693/大阪高裁判決平成10年7月16日/平成10年(う)309号/判例タイムズ1006号282頁/判例時報1647号156頁
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