その他

無の境地


揺れ始める身体 ふわふわと気持ち良い

暫くして 縄はほどかれていく。

指折る程度 僅か数回の緊縛。

再び 縄が身体を縛り始める 揺れる身体を引き上げ不安定なつま先
片脚が上がり もう一方の脚も
宙に浮いた身体 しなだれた首 垂れた頭
音のない世界  真っ白な世界

どこまでも広く深く…無の世界。

彼の声すら遠く  返事をするのがやっと
彼を容易く迎え入れる程ヒクつき濡れきっているのに
挿入すら感じない
いや、感じているのに それ以上の心地よさに喘ぎ声すら出ない。

うっすらした意識の中 降ろされる身体
「おかしい。私 おかしいの。…眠い  …ような?  
   …おかしい…眠い。」
言い終わる頃 私を抱え腕に包んだ頭を枕に寝かせれた。
「大丈夫だよ」と髪を撫でた彼を見て視界が消えた。

初めての吊りで完全に私は縄の虜になった
彼の縄の虜に。

食い散らすセックスとは違う
穏やかで高い快楽の波に飲み込まれた

火照ったままの身体とだらしない腰を
ハイヒールのかかとが必死に支えてくれていた気がする
真っ白な世界はその後 いつも数日続く
思い出せるのはひとコマ ひとコマ  …飛び飛び。
ただ 
身体には  少しずつ   しっかりと
縄が染み込んでいった  縄跡と入れ違うように。



※ 文中の彼は専門家にご教授いただいて私を縛っております。
    緊縛での事故が度々あるようですので生意気かと思いましたが
    一文入れさせて頂きました。
                                                                            黒柳蜜子

 

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