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ゆりこの柔らか夜話 その1

ゆりこさんはオナニーの準備をしていたのです。


掃除や洗濯を終えて一息いれる午前中のあの時間帯。


誰もいない。


電気あんま器の充電を確認し、
お布団にすべりこもうとしたその時。


ぴんぽんぴんぽん。


あら。オナニーの邪魔をするなんて無粋ねえ。だあれ?


既にぬるぬるした身体で玄関をあけますと、神様でした。


「まあ、来たの」


「うん。ちょっと近くに用事があってね。ご亭主は?」


「会社。今日は大丈夫だからあがる?お茶でもいれるわ」


「うん、じゃあ、そうさせてもらおうか」



あ、ちょっと待って、という前に神様は家のなかにあがりこんでしまいました。


良いんですけど、あのー、神様って裸足だから足汚いのよね。



「ふうん」


「なあに?なんか変?」


「やあ、こんな家なんだね、性慾のにおいがするな」


「気のせいよ」



神様がここに来たのは初めてだ。それにしても神様の用事っていったいなんだろう。


「ねえ、つったってないで椅子にかけて。お茶のまえに足を拭かせてね」


素直に腰かけた神様の足元に膝まずいてたらいのお湯に足をつけてもらい、


それから布で足をぬぐってゆく。


神様は毛深い。一見すると、なにかおおきな獣にみえる。


足指にも足の甲にも固くて濃い茶色の毛がふさふさと生えていて、


そこに泥がこびりついています。


足指を口にいれる。


ゆりこさんは足指を丹念に舐めながら質問する。


「ねえ、泥がいっぱいね」


「うん。野原に用事があったんだよ」


野原に用事。神様の野原の用事・・・


「ねえ、用事ってもしかしておしつこのこと?」


「ああ、野原にお花を摘みにねえ」


ホントかしら?ホントに小用のためだけにお出かけしたのかしら?


すっかり足指も舐め終わったのでたらいと布を片付け、薬缶に水をいれ火にかける。


「さあ、足も綺麗になったしお茶にしましょ。
なににする?」


「ああ、じゃあ、水を」


「お水?珈琲も紅茶も緑茶もいろいろあるのに。


お菓子はどう、ビスケットとかどら焼きとか」


「うん、ありがとう、水がいいんだ。それと、はちみつがあればほしいな」


薬缶の火をとめ、水とはちみつをテーブルに置き、


ゆりこさんは白湯を飲みながら神様をじっとみてしまいます。


神様は毛むくじゃらの指で小皿からはちみつをすくうと、


妙にオレンジ色の舌を伸ばしてぺろぺろと舐める。


その後皿ごと顔の近くにもっていきそのまま舐め、


最後にコップの水をひといきに飲み干す。


「ごちそうさま」


「どうしたしまして。満足したの?」


「うん、これで煙草があれば言うことないなあ」


「ああ、いいものがある。あのね、巻きたばこがあるの。夫が買ってきたの。


でも、葉っぱはあるんだけどね、もう巻紙がないのね。


だから、これで巻きましょう」


「仏和辞典・・・・これ、破いていいのかい?」


「もちろん。ねえ、どんな言葉の煙草になるかなあ?」



ゆりこさんと神様はそれぞれ好きな頁を選んで辞書を一枚破り、


お互いに見せ合いっこしました。


そこに煙草の葉っぱを置いて、くるくると丸めて火をつける。



それからひとしきり、


太陽の頁はおちんちんの味がするとか「これは躊躇する、の煙」等と言って


仏語煙草を愉しんだのです。



この後、もちろん神様とまぐわいもたのしむのですが


今日の想像はここまで。


おやすみなさい。
 

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