狂ったアート
幼い頃から私の心の中には狂いがあった、
その狂いを発散したく常にきっかけを探していたのである。
思春期には、誰かとの殴り合いの喧嘩で狂いを発散した。
体も小さくほとんどが殴られるのだが、
その無謀な触発は私の狂いを鎮魂させた。
いつしかその狂いはロックミュージックの中へと誘われて行った。
60年代や70年代のサイケディリックな音楽を好んだ、
SEX DRUGS R&R が私の青春となり、
ドラッグカルチャーはビートニク文学や
ラジニーシやクリシュナなどのインド思想などにも興味を持たせた。
映画はスタンリー・キュブリックやジャン=リュック・ゴダールなどを好み
いつしか無謀な暴力行為は、クリエイティブなものへと昇華していったのだ。
私の魂の苛立ちは全て、クリエーションとなり
GLAMDYとういうファッションブランドを作り上げた。
気取ったファッション業界には馴染めず、毒々しく狂い続けた。
ショッキングピンクのフェイクファーのスーツや
ビニールハウスに使用されるビニールとファスナーで作られたワンピースなど
エキセントリックで型破りの作品を発表していった。
そして25年間私の狂いは、服を作り続けることで鎮魂されていた。
酒という気狂い水での宴もそれと並行して開催されていたのだが...
そして宴の終焉とともにGLAMDYも死んだ。
10年地下に潜り緊縛師をして、
私の魂の狂いは完全に消え失せた。
来る日も来る日も人を縛り、
その人たちの魂の狂いを鎮魂させたのだ。
私の生み出す縛りこそが狂ったアートなのであろう、
緊縛は究極のオートクチュールであり狂ったアートなのだ。
緊縛というアートそのものが狂ったアートなので
幼い頃から私の魂をイラつかせた狂いは
縛りを人に施せば施すほどに
狂いから解き放たれ、ここで完全に成仏した。
今私の魂は、
驕りのない穏やかな気持ちで毎日を過ごし、
狂いに苦しむ人たちの魂を鎮めているのです。
緊縛は狂ったアートなのであり私の天職なのでしょう。
喜多征一
撮影:ミキさん モデル:saya
キュレーター紹介
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