瘋癲ノ喜多サン
性愛(熱)
恋愛とは、誰かに染められることではない。
誰かの価値観を借りて生きることでもない。
人は、愛によって変わるのではない。
自ら愛するという行為によって、自分を変えていくのである。
情熱も快楽も、誰かから与えられる贈り物ではない。
それは肉体の奥底で、太古から眠り続けていた獣の息遣いだ。
熱く湿った舌先で、静かに目を覚ますもの。
愛されたいという願いは、まだ幼い。
本当に成熟した人間は、愛することを恐れない。
愛するとは、相手を所有することではない。
自分という境界を壊し、相手という深い闇へ、
その闇には歓びがあり、嫉妬があり、羞恥があり、陶酔がある。
そして、ときに小さな死― la petite mort のように、理性は静かに息絶える。
その瞬間、人は社会が与えた名前や肩書きを失う。
善人でも悪人でもない。
男でも女でもない。
ただ、欲望という宇宙を漂う、一つの生命になる。
汗に濡れた皮膚が触れ合い、息が混ざり、内部が熱く脈打つ。
深く人を愛した者ほど、もう昨日までの自分には戻れない。
快楽とは快適さではない。
愛とは安心ではない。
それは、自分という殻を溶かし尽くし、
その熱は、ときに指先から腿の内側を這い、喉の奥で低く唸り、
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