瘋癲ノ喜多サン

10年ぶりの再会



彼女が、はじめてセラピーに来たのは10年前

20歳になったばかりのようだが、

実年齢よりいくぶんかあどけなさが残る女の子だった。

深夜バスに乗ってナマハゲの国からやって来たという。

それから何度か深夜をくぐり抜けて縛られた女の子

いつしかナマハゲの国からのバスは到着しなくなった。



あれから10年女の子は女性になって、

シーサーの国から飛行機に乗って飛んできた。



10年前、縛られて感情が抑えられなくなり涙を流していた女の子は

静かに軸が整うような不思議な感覚を残してまたシーサーの国へ、

恋やら仕事やら女の子を大人にするには充分な10年だった。

思いのほか人生は長い、張り切って生きてみよう。

世に存在する人間関係とはまるで違う

女たちは、必要な時に何かに導かれるようにやって来る。

本名も職業も年齢も知らない

ただその人が誰にも知られたくない知ることの出来ない

それを私は知っている。

必要な時にだけ来てくれる関係

切なくも心地のいい繋がりだ。

キュレーター紹介

逝かせ縄という妙技を操り、多くの女性を快楽の果てと誘う。東京と名古屋に道場を持ち、日本古来の文化である美しい緊縛を多くの生徒に伝承している。美しくなければ緊縛ではない美しい緊縛は気持ちがいい、それは肉体と精神と性が解放されることだ。

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