瘋癲ノ喜多サン
恍惚のブルース
恍惚とは、なんだろうか。
辞書を引けば、こうある。
物事に心を奪われてうっとりするさま。
意識がはっきりしないさま。
老人が病的に頭をぼんやりさせているさま。
物事に心を奪われ、惚けてしまうこと。
あるいは、脳梗塞に罹り、意識が混濁する状態。
でも私は思う。
それはすでにブルースじゃないか。
人生の深みを増し、心と体に錆がつき、
まるで霞がかった夜の街のように、
自分の輪郭さえぼやけてくる。
そんな中でも、ふと心を奪われる瞬間がある。
記憶なのか、妄想なのか、現実なのか、
はっきりしないまま、ただ惹き込まれていく。
それが恍惚だ。
それがブルースだ。
若いころのように、瞬間的な欲望で燃え上がるのではない。
もっと、ねっとりと、しぶとく、深く染み込むように愛し合う。
老いた男と女が交わすまぐわいには、
時間の重みと、記憶の澱がまとわりつく。
若者のインスタントなセックスでは、とうていわからない。
愛と性と、人生と病が交錯する、その一瞬。
朦朧とした意識の中で、かすかに光る悦び。
人はおぼろ。
人はおもろ。
おぼろげだからこそ、面白い。
曖昧だからこそ、美しい。
ああああ……
これぞ、恍惚のブルースよ。
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